「NZはTPPで日本を潰そうとしている」という農業関係者による意図的な誤訳デマ

TPP

「NZはTPPで日本を潰そうとしている」という農業関係者による意図的な誤訳デマskeeem

少し前に「『TPPで日本、韓国を押し潰すことができる』 ~ウィキリークスがアメリカの外交文書を暴露~」というニュースがネット上で流れた。

どこかで見出しだけ見て「アメリカならともかくNZごときが『日本を潰そう』なんてだいそれた事考えるかね?」と疑問に思っていたのだが、忙しくてニュースの詳細は見ていなかった。ちょっと時間が出来たので調べてみた。で、これが予想通りのひどいヨタ記事。

はっきり言うと意図的な誤訳でTPPが日本を潰す陰謀のようにミスリードする悪質な記事。そもそもこの記事(翻訳)が「日本農業新聞」という農業関係者によって書かれた業界紙。もうこの時点でまったく中立的視点などは皆無で、TPPをとにかく悪者にしたいという側のスタンスで書かれているのが分かる。

日本農業新聞の訳:
ニュージーランド外交貿易省のマーク・シンクレアTPP首席交渉官は
「TPPが将来のアジア太平洋の通商統合に向けた基盤である。もし、当初のTPP交渉8カ国でゴールド・スタンダード(絶対標準)に合意できれば、日本、韓国その他の国を押しつぶすことができる。それが長期的な目標だ」
と語った。(米国大使館公電から)

この訳で一番センセーショナルなのは「日本、韓国その他の国を押しつぶすことができる」というくだり。これだけ聞くと、あたかもTPPの存在意義そのものが日本を潰すための陰謀であるかのようだ。原文を見るとこの「押し潰す」は
“put the squeeze”となっている。まんま直訳という感じだが
実は、口語表現が豊富にある英辞郎で調べると

put the squeeze on
(人)に圧力をかける、(人)に脅しをかける、(人)に強要する

とある。つまり「日本と韓国に圧力をかけることができる」という文章にすぎない。前後の文章も含めて原文にあたると

If the eight initial members can reach the
“gold standard” on the TPP, it will “put the squeeze” on Japan,
Korea and others, which is when the “real payoff” will come in the
long term.

とある。これを普通に訳すと
「初期メンバーの8カ国がTPPにおける「ゴールドスタンダート」を確立できれば、日本や韓国、その他の国に対して強い圧力となり、長い目で見れば実質的利益を得ることができる。」

という風になる。この訳で見ると別に「TPPは日本を潰すのが目的」だなんて意図では言っておらず、単に「初期メンバーで有利な条件を決めてしまうのが得策」という外交交渉では当たり前のことを語っているだけ。

しかも韓国の名前が入っていることから分かるように、圧力を掛けるのは日本と言うより「TPP非参加国」の例示にすぎない。つまりこれはTPPの経済圏のメリットでTPP非参加国との差別化を図り、プレッシャーをかけられる、というTPPメリット論を説いたにすぎないのだ。

これを「押し潰す」などとわざと誤訳させて、「TPPはアングロサクソンの日本潰しの陰謀だ!」とミスリードさせる記事を書いている。しかも書いたのはまったく政治的に中立的ではない日本農業新聞という農業関係者の業界紙。いわば東スポレベル。つまり、もともと真面目に聞くタイプの話ではないのだ。

農業関係者は、こんな意図的なデマ流してまでTPP反対するような汚い業界なのだなあ、と改めて呆れ返ってしまった。

参考:
Wikileaksでの原文
日本農業新聞の当該記事の転載

2 comments

  1. なな より:

    「NZはTPPで日本を潰そうとしている」という農業関係者による意図的な誤訳デマ | http://t.co/4VIs5Ujd

  2. ぱふ より:

    失礼ちょっとWPのTweetボタンのテスト。 「NZはTPPで日本を潰そうとしている」という農業関係者による意図的な誤訳デマ | skeeem http://t.co/evcxpgTZ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です