実在ニョーボこと須賀原洋行先生の奥様が亡くなられて悲しい

実在ニョーボこと須賀原洋行先生の奥様が亡くなられて悲しいskeeem「実在OL」「実在ニョーボ」こと漫画家の須賀原洋行先生の奥様のよしえサン(同名の漫画もあり)が癌で亡くなられたそうだ。乳がんが脳に転移したとのこと。

須賀原洋行氏の「実在ニョーボ」こと、よしえサンについて – Togetter

会ったこともない人物で、そもそも須賀原先生のマンガ自体もう10年くらい読んでいなかったのに妙に悲しい。もちろん大学の頃から読んでいたマンガに登場している重要なキャラでかつ実在する人間がモデルだということもあるが、それにしたってマンガの実際の人間とは違うわけだし、会ったこともない人の死でここまで悲しいのはなにか不思議。

須賀原洋行先生のマンガのほとんどに登場した「実在OL」であるニョーボ。先生は自分の作品にこれでもかと言わんばかりに奥さんのキャラを使いまくっていて、馴れ初めから付き合っている時代、結婚生活まで詳細に書いている。(もちろんフィクションもかなりあるだろうが)

特に「よしえサン」は僕の大好きな漫画で、でもじゃあどこが面白いか言ってみろと言われてもぜんぜん言えない。内容だけ言えばはっきり言ってそんなに面白くない。でも読んでてなにか楽しい。家族のアットホームな物語といえば同じモーニング系のクッキングパパがあるが、あれは本当に全然面白くない。作者自身がアットホームで社交的な人物が描くアットホーム物語なんて全然面白くないのだ。

須賀原洋行は自分の漫画で再三描いていたが、非常に神経質で気むずかしく人間嫌い、なんでもめんどくさく理屈っぽく考えてしまうタイプで人付き合いはまるで駄目な人間だった。そんな作者がよしえサンと出会って、彼女のあまりに明るく豪放磊落な性格に引きづられ、結婚し家庭を持ち、少しづつ世間慣れして「普通の人の幸せ」を味わうことができた。よしえサンは作者にとって普通の世間との接点となる「窓」だったのだ。作者は世間とのつながりの窓になってくれたニョーボへの愛情と感謝を、いつも隠さずに描いていた。

たぶん彼の書く「よしえサン」シリーズはそういった作者とよく似た面倒くさい性格の人間にとっての救いだったんだと思う。偏屈なコミュニケーションが苦手な性格でも、よしえサンのような「窓」となってくれる人間によって世間と触れ合うことができ、人並みの幸せを得ることができる。いろんなところに寝不足のまま無理やり遊びに行き、子供ができ、マンションを買い。作者のそういうニョーボに対する感謝が作品ににじみ出ていただけに読んでいた同類の人間はなんとなくその救いを疑似体験し、自分がそのような相手を得られた人も、得られなかった人もなんとなく癒やしを感じていたんだと思う。

2chの漫画板の須賀原洋行先生のスレは昔から先生のことをボロクソに罵倒するのが伝統で、それはやはり先生の同類のひねくれた人間が先生のマンガの読者層だったのでしょうがないとはいえ、ちょっと見てて殺伐とする感じでそのあまりの雰囲気の悪さに俺は見ていなかった。よしえサンが亡くなったと聞いてそのスレを10年ぶりに開いてみたら、今回の出来事がイブニングで発表される直前までは相変わらずボロカスにみんな書いているのだが、訃報が発表されたらよしえサンの死にみんな本気で悲しんでいた。やはりみんな先生は叩きつつもよしえサンのキャラは好きで、どこが彼女のキャラクターに救いを感じていたからこそ、ボロクソ言いながらも先生の作品を読んでいたんだと思う。

世間との窓を失った須賀原先生、大丈夫かな。
俺も悲しいです。ご冥福をお祈りします。

よしえサン最終回

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