「双子の多い村」とヨーゼフ・メンゲレ

「双子の多い村」とヨーゼフ・メンゲレskeeemかつてナチスにヨーゼフ・メンゲレという医者がいた。

ヨーゼフ・メンゲレ(Josef Mengele, 1911年3月16日 – 1979年2月7日)はドイツの医師、ナチス親衛隊 (SS) 将校。

第二次大戦中にアウシュヴィッツで勤務。収容所の囚人を用いておよそ学術的価値の認められ得ない人体実験を繰り返し行った。実験の対象者を選別する際にはナチス親衛隊の制服と白手袋を着用し、クラシックの指揮者さながらに作業にあたったと伝えられ、彼の姿を見た人々からは「死の天使」と恐れられた。人種淘汰、人種改良、人種の純潔、アーリア化を唱えるナチス人種理論の信奉者。
ヨーゼフ・メンゲレ – Wikipedia

彼はアウシュヴィッツで残酷かつ学術的には無意味で苦痛を与えるだけの人体実験を行ったことで有名。特に双子に異常な興味を示し、研究がエスカレートして健常な双子を人為的に手術をして人工の「シャム双生児」を製作するという異常な人体実験まで行っていた。彼はナチス崩壊後、捕虜として捕まらずに南米に脱出することに成功。戦犯として裁かれることなく逃亡生活を送っていた。結局モサドもついに彼の行方を捉えることは出来ずブラジルで一生を終えている。

このナチス戦犯のヨーゼフ・メンゲレと、南米のちょっと変わった小さな村に奇妙な接点がささやかれている。

それはブラジルにあるカンディド・ゴドイという村。実はこの村は「双子が異常に多い村」として有名。なんと88世帯に44組の双子がいるという。なぜこのような現象が起こるのか?

 

 

ここで前述のヨーゼフ・メンゲレの名が出てくる。この村はドイツ系の街で、戦前に撮影したナチスの旗を持つ村の子供の写真などが発見されている。つまりナチス・ドイツと縁が深い場所だったのだ。そしてヨーゼフ・メンゲレも戦後ブラジルへ潜伏。さらに彼は双子の研究を行っていた。

双子に異常な執着を持つ元ナチのマッドサイエンティストが、ナチス崩壊後もその夢を諦めきれず、潜伏先のドイツ系の村を訪ね、自分の研究成果「双子を生む研究」の実験材料としてその村民を対象にした結果、この村の双子発生率の高さにつながるのではないか、という恐ろしい話かもしれないのだ。

だが実はこの双子の村とメンゲレを繋げる説、センセーショナルで面白くはあるがよくよく調べてみると非常に怪しい。

・双子の発生率は現在に至るまで続いている
ヨーゼフ・メンゲレは1979年には死亡しているし彼がこの村に出没できた可能性があるのは1950年代以降。もし彼がなんらかの「実験」をしていたとしても、それが現在まで続いているはずはない。

・彼が双子の村カンディド・ゴドイを訪問したという確かな証拠がない
既に死んだ人の伝聞や、おじいさんに写真を見せて「この人が来たことある?」などと怪しい記憶に頼ったものばかりで、公式な記録として彼がこの近辺に来たことがあるという残っていない。彼を追っていたモサドのナチハンターも「彼がこの村の近辺にいたという情報はない」と証言している。

・双子を確実に産ませる方法は現在にいたっても開発されていない
双子が生まれる要因はいまだはっきりとはしておらず、1950年代に元ナチスの医者がその研究を完成させていたとは考えにくい。当時できたこととしては成長ホルモンを投与することだが、前述の現在に至るまで続いているということは遺伝子に何らかの変化を加える必要があり成り立たない。

・彼の遺品を確認しても、研究機材や双子の研究についてのメモなどが一切発見されない
そこまで戦後も執念を燃やして研究していたならメモなどの記述がかならずあるだろう。結局彼の日記を確認しても逃亡生活の辛さが述べられているだけで研究については一切触れられていないという。

では結局この村で双子が発生する理由はなんなのか?

研究者がこの村の家系図や遺伝情報、血液情報などを集め調査した結果、この閉ざされた村の「濃い血」に原因がありそうだという。

つまり一般的には遺伝的にまれとみられる形質でも、少数の遺伝子の持ち主が外部との接触のない閉鎖的な社会で近親結婚を繰り返した結果、その遺伝子集団の中では当たり前の形質になっていることは「創始者効果」として認められている現象だ。

創始者効果(そうししゃこうか、founder effect)とは、「隔離された個体群が新しく作られるときに、新個体群の個体数が少ない場合、元になった個体群とは異なった遺伝子頻度の個体群が出来ること」を指す。生態学・集団遺伝学の用語。始祖効果、入植者効果とも呼ぶことがある。
創始者効果 – Wikipedia

この村の家系図と墓地を調べた結果、この村はもともとたった8世帯のドイツ人の開拓者集団から始まっていた。辺鄙な地方で外界からも閉ざされており、外部から新しい人間(遺伝子)を取り入れることはあまりなかったのであろう。8世帯の誰かが双子のできやすい遺伝子を持っており、長年あまり外の人間を受け入れることもなく現在まで続いているとするとこの双子の発生率が高い、ということも十分ありうることなのだ。

「人体実験を繰り返した異常なナチスの医者が戦後もその企みを忘れず南米で実験を繰り返し成果をあげていた」というのは人の耳目は集めるが、しょせん東スポネタ?というくらいの信憑性しかないのだ。

4 comments

  1. きなこ より:

    RT @skeeeming: 「双子の多い村」とヨーゼフ・メンゲレ http://t.co/HvQTBJVa

  2. ドクロ軍曹 より:

    @RB_neian 双子の多い村なんてのもありますね。何か双子になる要因ってあるみたいですね http://t.co/odYU8sDY

  3. Nino より:

    『メンゲレが双子を産ませる実験を行った村』という視点で語るドキュメンタリー番組と、以下のURLの記事の意見が正反対で、挙げてる推論も真逆、まるでパラレルワールド。 @puffyjet: 「双子の多い村」とヨーゼフ・メンゲレ http://t.co/hEbyHeBL 

  4. ぱふ より:

    ブログ更新しました: 「双子の多い村」とヨーゼフ・メンゲレ – http://tinyurl.com/3owlzd6

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